健康診断で「尿酸値が高い」と指摘されたり、突然の関節の痛みに不安を感じていませんか? 尿酸値が高い状態(高尿酸血症)は、放置すると痛風発作だけでなく、全身の血管や臓器に影響を及ぼす可能性があります。しかし、正しい知識を持ち、適切な治療と生活習慣の改善を行えば、十分にコントロールできる病気です。

尿酸値が高い状態が続くと、血液に溶けきれなくなった尿酸が結晶化し、関節や臓器に溜まっていきます。これが引き起こす最大の問題が以下の2つです。
1.痛風発作と関節破壊:関節にたまった結晶が炎症を起こし、「風が吹いても痛い」と言われるほどの激痛(痛風発作)を引き起こします。放置すると関節が変形することもあります。
2.合併症の進行: 痛みがなくても、尿酸の結晶は静かに体を蝕みます。特に腎臓に結晶がたまると腎機能が悪化したり、尿路結石の原因になります。さらに、糖尿病、高血圧、脂質異常症と密接に関係し、動脈硬化を進行させ、将来的に心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めることがわかっています。
尿酸は「尿」の「酸」と書きますが、実は体内で作られる物質の名前です。よく「プリン体」が悪者扱いされますが、実は食事から摂取されるプリン体によって作られる尿酸は全体の約2割にすぎません。
・残りの8割は? 新陳代謝によって古くなった細胞が分解される際や、エネルギーを使う燃えカスとして体内で作られます。
・体内のバランス 健康な状態であれば、作られた量と同じ量の尿酸が尿や便として排泄され、体内の量は一定(プールお風呂の水位のようなイメージ)に保たれています。
尿酸値が高くなる原因は、大きく分けて3つのタイプがあります。
1.排泄低下型(出せないタイプ): 日本人に一番多いタイプです。体質や遺伝、肥満などが原因で、腎臓からうまく尿酸を排出できなくなっています。
2.産生過剰型(作りすぎタイプ): 暴飲暴食、激しい運動、アルコールの摂取などで、体内で尿酸が過剰に作られてしまうタイプです。
3.混合型: 上記の両方の原因を持っています。
痛風発作は、関節の中に溜まった尿酸の結晶が剥がれ落ちた際、それを白血球が攻撃することで起こる「急性関節炎」です。
・症状: 突然の激痛、赤く腫れ上がる、熱を持つ。
・場所: 足の親指の付け根が最も多く、その他、足首、足の甲、膝、手首、肘などにも起こります。
・経過: 発作は通常24時間以内にピークを迎え、1〜2週間程度で自然に治まります。しかし、「痛みが消えた=治った」ではありません。尿酸値を下げない限り、結晶は溜まり続け、発作はより短い間隔で繰り返し起こるようになります。
・なりやすい人: 95%以上が男性です(女性ホルモンには尿酸の排泄を促す作用があるため)。ストレス、激しい運動、脱水、尿酸値の急激な変動が引き金になります。

「尿酸値が高い=すぐに薬」というわけではありません。数値や合併症の有無によって治療方針が決まります。
〇まずは生活習慣の改善から
尿酸値が高めの方(7.0mg/dL〜)は、まずは食事や運動などの生活習慣を見直します。
〇薬物治療の対象となる人
日本痛風・核酸代謝学会のガイドラインに基づき、以下の方は薬による治療を検討します。
・痛風発作を起こしたことがある人(再発予防のため必須です)
・尿酸値が8.0mg/dL以上で、合併症がある人(腎障害、尿路結石、心臓病、メタボリックシンドロームなど)
・尿酸値が9.0mg/dL以上ある人(合併症がなくてもリスクが高いため)
肥満の解消は尿酸値を下げる最も有効な手段の一つです。無理なダイエットは逆効果ですが、適正体重を目指して以下の点に注意しましょう。
① プリン体の摂りすぎに注意(でも神経質になりすぎない)
プリン体は「美味しいもの(細胞の数が多いもの)」に多く含まれます。
・控えたい食品: レバー、白子、干物、カツオ、イワシ、エビ、カニみそなど。
・ポイント: 全く食べてはいけないわけではありません。毎日大量に食べることを避け、野菜などと一緒にバランスよく食べましょう。
② アルコールとの付き合い方
「ビールじゃなければ大丈夫」は誤解です。アルコール自体に「尿酸を作らせる」「尿酸の排泄を邪魔する」という2つの悪い作用があります。
・適量: 日本酒1合、ビール500ml、ウイスキーダブル1杯程度を目安に。
・休肝日: 週に2日以上は肝臓を休ませましょう。
③ 水分をしっかりとる(1日2L目安)
尿の量を増やして、尿酸を体の外へ洗い流すことが重要です。お茶や水でこまめに水分補給をしましょう(糖分の多いジュースやアルコールは水分補給に入りません)。
④ 野菜・海藻を積極的に(尿をアルカリ性に)
尿酸は、尿が酸性だと溶けにくく、結石になりやすくなります。野菜、海藻、大豆製品などのアルカリ性食品を摂ることで尿をアルカリ性に傾け、尿酸を排泄しやすくします。
⑤ 適正カロリーと肥満解消
内臓脂肪が蓄積すると、尿酸を作る量が増え、排泄機能が低下します。食べ過ぎに注意し、腹八分目を心がけましょう。
⑥ 軽い有酸素運動を取り入れる
ウォーキングなどの有酸素運動は推奨されます。逆に、筋トレなどの激しい無酸素運動(ダッシュや重量挙げ)は、一時的に尿酸値を上げてしまうため、やりすぎには注意が必要です。

薬物治療のゴールは、体内の結晶を溶かすために「尿酸値を6.0mg/dL以下に維持すること」です。
・発作中の治療: まずは痛みと炎症を抑える薬を使います。発作中に尿酸値を下げる薬を新たに飲み始めると、逆に発作が悪化・長期化することがあるため、発作が治まってから尿酸降下薬を開始します。
・維持療法: 尿酸生成抑制薬や尿酸排泄促進薬など、患者さんのタイプに合わせた薬を使用します。急激に数値を下げると発作が誘発されるため、少量から開始し、数ヶ月かけて徐々に6.0mg/dL以下を目指します。
・継続が鍵: 尿酸値が下がっても、自己判断で薬をやめるとすぐに元に戻ってしまいます。医師の指示通りに服用を続けることが大切です。
患者さんからよくいただく質問をまとめました。日々の生活や治療の参考にしてください。
A. 残念ながら、どんなお酒でも飲み過ぎれば尿酸値は上がります。
確かにビールはプリン体が多く含まれていますが、実はアルコールそのものに尿酸を体内で作らせる作用と尿酸の排泄を邪魔する作用があります。 プリン体ゼロの発泡酒や、蒸留酒(焼酎、ウイスキー)であっても、アルコールを分解する過程で尿酸値は上昇します。種類よりも総量が重要です。休肝日をつくり、適量を守って楽しむことが大切です。
A. 痛風発作(激痛がある時)は、絶対に冷やしてください。
痛風発作は関節の中で激しい炎症が起きている「火事」のような状態です。お風呂に入ったり、マッサージをしたりして温めると、血行が良くなりすぎて炎症が悪化し、痛みが激増します。 発作が起きたら、安静にし、氷嚢や保冷剤(タオルで巻く)などで患部をしっかりと冷やし、なるべく早く受診してください。心臓より高い位置に足を上げると少し楽になることがあります。
A. 必ずしも一生ではありませんが、長期的な治療が必要です。
尿酸値が高くなる原因が肥」や食生活だけにある場合は、生活習慣の改善で薬をやめられることもあります。 しかし、体質(遺伝)が原因で尿酸を排泄する力が弱い方も多く、その場合は体質を補うために長くお付き合いが必要になることが多いです。 高血圧や糖尿病と同じように、治すというよりは「良い状態をコントロールして、合併症を防ぐ」ためのパートナーとしてお薬を考えていただければと思います。
A. 自己判断での中断は一番危険です。再発のリスクが高まります。
痛みが消えても、体内の尿酸結晶がなくなったわけではありません。喉元過ぎれば…で治療を中断すると、関節に再び結晶がたまり続け、数ヶ月〜数年後にさらに重い発作が再発します。また、腎臓へのダメージも静かに進行します。 痛みが治まってからが、尿酸値を下げて結晶を溶かす「本当の治療」のスタートです。
A. 絶対にダメという食品はありません。神経質になりすぎず量と頻度を調整しましょう。
かつては厳格なプリン体制限が指導されていましたが、現在はプリン体の摂取制限よりも、肥満の解消(カロリー制限)の方が尿酸値を下げる効果が高いことがわかっています。 好きなものを一口も食べてはいけないわけではありません。「あん肝や白子を毎日山盛り食べる」のは避けるべきですが、全体のバランスを考えれば、過度な我慢によるストレスの方が体に良くありません。
おすすめの食品: 実は乳製品(牛乳・ヨーグルト)には尿酸値を下げる効果があると言われています。低脂肪のものを積極的に摂りましょう。
A. 治療初期によくある反応です。薬が効いている証拠でもあります。
尿酸値を下げる薬を飲み始めると、関節にこびりついていた結晶が溶け出し、小さくなって剥がれ落ちることがあります。これを体が異物とみなして攻撃し、発作が起きることがあります(これを「動員発作」と呼びます)。 薬が合わないわけではありません。 結晶が溶けて掃除されている過程ですので、自己判断で薬を止めず、医師に相談してください。発作止めの薬を併用しながらコントロールします。
A. 男性に比べると少ないですが、閉経後などはリスクが上がります。
女性ホルモンには尿酸の排泄を促す働きがあるため、女性の痛風患者は全体の1〜2%程度と非常に少ないです。しかし、閉経後は女性ホルモンが減少するため、尿酸値が上がりやすくなります。 また、極端なダイエットや脱水、特定の薬剤の影響、遺伝的な要因などで、年齢に関係なく女性でも発作が起こることはあります。