甲状腺機能異常には甲状腺機能亢進症(hyperthyroidism)と甲状腺機能低下症(hypothyroidism)の2つの状態があります。
甲状腺ホルモンの分泌過剰によって引き起こされる病気です。甲状腺ホルモンは、体の代謝、エネルギー利用、心臓や神経の働きに関わるため、過剰に分泌されると体の多くの機能に影響を与えます。代表的な病気にバセドウ病があります。この病気では、免疫細胞が甲状腺を攻撃して甲状腺ホルモンの分泌を刺激します。他にも、甲状腺腫や甲状腺炎によっても引き起こされることがあります。
グレーブス病と呼ばれることもあります。若年女性に多く、患者数は数万人いるとされます。甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることにより新陳代謝が亢進し、動悸・振戦(ふるえ)などの様々な症状が出現します。放置すると重症化することもあります。
自分の免疫が原因で甲状腺を刺激することにより、甲状腺ホルモンが必要以上に産生される状態になります。
動悸、発汗、ふるえ、疲れやすさ、体重減少、下痢、月経不順、不眠、精神不調など様々な症状が出ます。
診察所見、血液検査、甲状腺超音波検査などで診断します。
内服で甲状腺ホルモンをおさえます。長期間の服用が必要であり、内服当初は副作用が出る可能性がありますので、頻繁に通院して血液検査をおこなう必要があります。ホルモンが正常化すれば徐々に減量していきます。
薬剤治療の効果のない人、副作用で飲めない人などが対象となります。
甲状腺の腫れが大きい人、薬物治療で効果のない人、副作用で使用できない人が対象となります。
甲状腺ホルモンの分泌が少なくなり、体の代謝が落ちた状態です。無気力、疲れやすい、むくみ、寒がり、体重増加、便秘など起こります。軽度の場合には症状が乏しいことも多いです。ホルモン不足が顕著になると、傾眠や意識障害をきたすこともあります。また月経異常や不妊などにも関連します。
甲状腺でのホルモン合成と分泌が低下した場合と、甲状腺ホルモンは正常に分泌されているのに、作用が低下している場合があります。ほとんどが前者であり、甲状腺自体に原因がある場合(原発性甲状腺機能低下症)と、甲状腺自体には異常はないけれど、それを働かせる下垂体や視床下部の機能が低下している(中枢性甲状腺機能低下症)があります。
最も多いのは橋本病です。これは自己免疫性疾患のひとつで、甲状腺が腫れることもあります。甲状腺に対する自己抗体が陽性になります。その他徐脈、うつ状態、筋力低下、脱毛、皮膚乾燥、低体温などがあります。また海藻やヨード卵の過剰摂取によっても認めることがあります。摂取を控えると正常化します。
下垂体や視床下部が原因です。脳腫瘍や脳外科術後、外傷後などが原因になります。
甲状腺ホルモンであるT4製剤(チラーヂン)の服用をおこないます。血液検査でホルモンをチェックしながら調節します。一時的な甲状腺機能低下症の場合は治療の必要はありません。