はら内科医院 内科・内視鏡内科・消化器内科・肝臓内科

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気管支喘息

長引く咳や息苦しさは「気管支喘息」かもしれません|原因・症状から最新の治療法まで徹底解説

「風邪をひいてから、咳だけが1ヶ月以上続いている」、「夜になると咳き込んで眠れない」、「階段の上り下りで息が切れるようになった」

 もし、このような症状でお悩みなら、それはただの風邪ではなく「気管支喘息」かもしれません。 喘息は子どもの病気と思われがちですが、実は大人になってから発症する方が急増しています。 「もしかして?」と思った時が、治療の始めどきです。このページでは、喘息の正体から正しい治療法まで、わかりやすく解説します。

●気管支喘息とは?

気管支喘息(きかんしぜんそく)とは、肺に空気を送り込む通り道である「気道」に慢性的な炎症が起こる病気です。健康な人の気道は、土管のように広くてスムーズですが、喘息の方の気道は、炎症によって壁がむくみ、赤く腫れあがっています。そのため気道が狭くなり、空気の流れが悪くなります。この状態の気道は非常に敏感です。そのため、健康な人なら何ともないようなわずかな刺激にも過敏に反応してしまいます。

・少しのホコリやダニ
・冷たい空気
・風邪などの感染症
・たばこの煙
・運動やストレス
といった日常的な刺激でも、気道が急に収縮し、咳や息苦しさ、ゼーゼー・ヒューヒューといった呼吸音(喘鳴)が起こります。
喘息は子どもから大人まで発症する病気で、最近では大人になってから発症する「成人喘息」も増えています。適切な治療を行えば、症状をしっかりコントロールし、普段通りの生活を送ることが可能です。

●あなたは大丈夫?喘息セルフチェックと主な症状

 喘息の症状は人によって様々ですが、以下のようなサインがあれば要注意です。

典型的な症状(喘息発作)

・ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音がする(喘鳴:ぜんめい)
・激しい咳き込みで、話すのが辛い
・息を吸うのも吐くのも苦しい
・胸が締め付けられるような圧迫感がある

こんなタイミングで悪化しませんか?

 喘息の最大の特徴は、症状が出る時間や条件に波があることです。
・夜間から早朝にかけて咳がひどくなる
・季節の変わり目や、寒暖差が激しい日
・台風の接近など、気圧が下がる時
・運動をした後や、大笑いした後
・タバコの煙、線香、強い香水の匂いをかいだ時

【注意】咳だけが続く「咳喘息」が増えています 「ゼーゼー」という音はせず、空咳(からせき)だけが数週間続く」という場合、咳喘息(せきぜんそく)の可能性があります。放置すると本格的な気管支喘息へ移行することもあるため、早めの受診が大切です。

●なぜ喘息になるの?(原因と誘因)

 喘息の原因は、体質(遺伝)と環境要因が複雑に絡み合っています。 大人になってから発症する場合、アレルギーが原因ではないこともあります。

主な悪化要因(アレルゲンと刺激)

・アレルゲン・・・ダニ、ハウスダスト、ペットの毛(犬・猫・ハムスター等)、カビ、花粉
・環境・刺激・・・ タバコの煙(受動喫煙含む)、冷たい空気、排気ガス、強い臭い
・体調・その他 ・・風邪・インフルエンザなどの感染症、ストレス、過労、肥満、特定の薬(痛み止めなど)

●気管支喘息の治療法(2つの柱)

 喘息治療の最終ゴールは、健康な人と変わらない生活を送ることです。 そのために、役割の違う2種類の薬を使い分けます。

①毎日使って発作を予防する薬(長期管理薬)

「発作が起きないように、炎症を抑える薬」
毎日コツコツ続ける、治療の主役です。症状がなくても使い続けることが最も重要です。
・吸入ステロイド薬(最も重要):気道の炎症を強力に抑えます。
・β₂刺激薬(長時間作用型):気道を広げた状態を保ちます。
・抗コリン薬
・ロイコトリエン受容体拮抗薬
・抗IgE抗体、抗IL-5抗体などの注射薬(重症喘息)

②発作が起きたときに使う薬(発作治療薬)

「苦しくなった時だけ使う、一時的な火消し役」
発作が起きた瞬間に気道を広げて呼吸を楽にします。
・短時間作用型β₂刺激薬(発作止めの吸入)
これは「苦しいときに楽になる薬」ですが、炎症そのものを治す薬ではありません。

重要:発作止めだけでは治っていません! 発作止めの吸入を使うと、すぐに呼吸が楽になります。しかし、これは一時的に気道を広げただけで、根本原因である気道の炎症(腫れ)は残ったままです。 炎症を放置すると、発作の頻度が増えるだけでなく、気道が硬くなって元に戻らなくなる「リモデリング」という状態になり、難治化してしまいます。

●「症状が消えた」=「治った」ではありません

 患者さんからよくいただく質問の一つに、「咳が出なくなったので、もう薬をやめてもいいですか?」というものがあります。 お気持ちはとてもよく分かりますが、答えは「NO(自己判断での中止は危険)」です。

氷山の一角理論

 喘息の症状(咳・息苦しさ)は、海の上に浮かぶ「氷山の一角」にすぎません。 海面下には、ずっと大きな「気道の炎症」という氷の塊が隠れています。
・症状あり:炎症が燃え上がっている状態
・症状なし:炎症はくすぶっているが、表面には出ていない状態

薬を自己判断でやめてしまうと、水面下でくすぶっていた炎症が、次の風邪や気候の変化をきっかけに再び爆発し、大発作につながるリスクがあります。 減薬や中止のタイミングは、医師が気道の状態を見極めながら慎重に決定します。焦らず、じっくり治していきましょう。

●ステロイドへの不安をお持ちの方へ

「ステロイド」と聞くと、「副作用が怖い」「一度使うとやめられないのでは?」と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。

吸入ステロイドは「安全性の高い」お薬です

 喘息治療の主役である「吸入ステロイド」は、飲み薬や点滴のステロイドとは性質が異なります。
1.ピンポイントで効く: 薬を直接気管支に届けるため、飲み薬に比べてごく微量(μg単位)で効果を発揮します。
2.全身への影響が少ない: 体内への吸収が非常に少ないため、糖尿病や高血圧、ムーンフェイスといった全身の副作用は極めて稀です。
3.局所の副作用は予防できる: 声枯れや口の中の違和感が出ることがありますが、吸入後の「うがい」で大部分は予防できます。

 むしろ、ステロイドを怖がって治療をせず、喘息発作を繰り返すほうが、体へのダメージや生命のリスクはずっと大きくなります。吸入ステロイドは「怖い薬」ではなく、「あなたの肺を守る盾」と考えてください。

【よくある質問】治療・お薬について

Q. 発作が起きた時だけ「発作止めの吸入」を使えば、普段の治療はしなくていいですか?

A. いいえ、発作止めだけで済ませるのは非常にリスクがあります。

 発作止めの吸入薬(短時間作用性β2刺激薬など)は、あくまで一時的に気道を広げて呼吸を楽にする薬であり、喘息の根本原因である「気道の炎症」を治す薬ではないからです。
炎症(気道の腫れ)を放置したまま発作止めだけでしのいでいると、以下のような悪循環に陥ります。
1.発作の頻度が増える(炎症が悪化するため)
2.薬が効きにくくなる(気道が薬に慣れてしまう)
3.気道が硬く変形する(リモデリング)

 「リモデリング」とは、炎症が繰り返されることで気道の壁が厚く硬くなり、元に戻らなくなってしまう状態です。こうなると治療が非常に難しくなります。 将来の自分の肺を守るためにも、症状がない時にこそ、炎症を抑える治療(吸入ステロイドなど)を続けることが何より大切です。

Q. 咳や息苦しさがなくなったら、もう薬をやめてもいいですか?

A. 自己判断での中止は禁物です。必ず医師にご相談ください。

 症状が落ち着くと、「もう治ったから大丈夫」「薬代もかかるしやめたい」と思われるのは自然なことです。しかし、喘息において「症状がない」=「治った(完治)」ではありません。
喘息は、症状が出ていない時でも、気道の奥深くで「小さな炎症の火種」がくすぶっている病気です。 この火種が残っている状態で薬をやめてしまうと、以下のような刺激が引き金となって、再び大きな発作(火事)が起きてしまいます。
・季節の変わり目、気圧の変化
・風邪やインフルエンザ
・ダニ、ホコリ、花粉
・タバコの煙

 治療のゴールは「薬をやめること」ではなく、「薬をうまく使いながら、健康な人と変わらない生活を続けること」です。 状態が安定していれば、医師の判断で薬の種類を減らしたり、弱くしたりすることは可能です(ステップダウン)。 「そろそろ薬を減らしたいな」と思ったら、自己判断で中止せず、まずは診察室でご相談ください。

●まとめ

・気管支喘息は、気道が慢性的に「やけど」のような炎症を起こしている病気です。
・「夜間や早朝の咳」「長引く咳」は喘息の重要なサインです。
・治療のカギは、症状がない時も「吸入ステロイド」で炎症を抑え続けることです。
・適切な治療を行えば、スポーツも旅行も、普段通りの生活が楽しめます。

「咳が長引いているけれど、病院に行くほどかな?」と迷われている方も、まずは一度ご相談ください。早期に発見し、適切な治療を始めることが、快適な呼吸を取り戻す最短ルートです。