大腸(結腸・直腸・肛門)に発生する癌で、腺腫という良性のポリープが癌になるものと、正常な粘膜から直接できるものがあります。日本人ではS状結腸と直腸に癌ができやすいといわれています。
大腸の粘膜に発生した大腸癌は徐々に大腸の壁に侵入し、大腸の壁の中のリンパや血液の流れに乗って、リンパ節や肝臓、肺など別の臓器に転移します。大腸の壁の外まで広がると腹腔内に散らばります。
早期の段階では自覚症状はほとんどなく、進行すると症状が出やすくなります。症状としては、便に血が混じったり赤または赤黒い便が出る、下痢・便秘、便が細い、おなかが張る、腹痛、貧血、体重減少などがあります。
最も多いのは血便ですが、痔などの良性の病気でもみられるため、放置しておくと癌が進行した状態で見つかることがあります。
癌が進行すると、慢性的な出血による貧血や、腸が狭くなる(狭窄する)ことによる便秘や下痢、腹部膨満が起こります。腸が詰まってしまうと腸閉塞となり、便が出なくなり、口からものを摂取できなくなります。大腸癌よりも先に肺や肝臓の転移病変が見つかることもあります。小さな異常でもそれが続く場合には早めに消化器科内科を受診して検査を受けることが大切です。
生活習慣と関わりがあるとされています。肉中心の食事、飲酒、喫煙、肥満によりリスクが高まります。
また、一部は遺伝の影響もあるとされています。家族性大腸腺腫症やリンチ症候群の家系では、大腸癌の発生が多くみられます。
禁煙、節酒、バランスの良い食事、適度な運動、肥満にならないことが重要です。食物繊維を多く含むものを摂取するのも効果的をされています。
40歳を越えたら年1回は大腸癌検診を受けましょう。多くの自治体では検診項目に含まれていると思います。便潜血検査とは目に見えない微量な血液を検出する検査で、大腸癌やポリープによる出血が便に混じっていないかを調べます。がんからの出血は間欠的であるため、2日分の便を調べるのが効果的です。
便潜血検査による検診は、死亡率を減らす科学的根拠があり、安全、簡単、安価な検査です。
検査の結果が「要精検」となった場合は、必ず精密検査を受けましょう。精密検査では大腸内視鏡検査を行います。
1回の検診で見つからないこともありますので、毎年定期的に受診してください。
検診で問題がなくても血便、腹痛、便の性状など気になることがあれば医療機関を受診してください。
大腸内視鏡検査、CT・MRI検査、PET検査、採血検査などがあります。通常、癌の疑いがある場合にはまず大腸内視鏡検査を行います。診断がついたら、癌の場所や進行度を調べるためにCT、MRI、PET検査などおこないます。
癌の進行度(粘膜内への深達度、転移の有無)や体の状態から以下の選択肢から決定します。
①内視鏡治療
②手術
③薬物治療
④放射線治療
①内視鏡治療
大腸カメラで切除する方法です。対象は粘膜の浅い部分にあり、リンパ節転移のないものです。手術に比べて体の負担が少ない治療ですが、出血や大腸に穴が開く場合もあり、その際には緊急手術となる場合もあります。病変によっては治療後に入院が必要となる場合もあります。
切除した病変は組織検査をおこない、再発の可能性があると判断された場合には後日追加で手術が必要となる場合があります。
②手術
開腹手術と腹腔鏡手術があります。
③薬物治療
術後の再発を防ぐ「補助化学療法」と、手術が難しい場合の「切除不能進行・再発大行癌に対する化学療法」があります。
④放射線治療
直腸癌術前におこなう補助治療や、緩和目的におこなう緩和的治療があります。
★大腸癌は年々増加しています。しかし早期発見が可能な病気であり、適切な治療をおこなえば多くは治る病気でもあるので積極的に検診を受けましょう。