はら内科医院 内科・内視鏡内科・消化器内科・肝臓内科

MENU

CLOSE

はら内科医院

ピロリ菌

ピロリ菌とは?胃がんとの関係や検査・除菌治療について詳しく解説

「ピロリ菌」という名前を聞いたことはあっても、具体的にどのような菌で、なぜ除菌が必要なのか疑問に思われている方は多いかもしれません。 日本人の胃がんの発生には、このピロリ菌が深く関わっていることがわかっています。

ここでは、ピロリ菌の正体から感染経路、引き起こされる病気、そして検査・治療方法までをわかりやすく解説します。

●ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)とは?

 ピロリ菌の正式名称はヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)といいます。 通常、胃の中は強い酸性(胃酸)の環境にあり、細菌は生息できないと考えられていました。しかし、ピロリ菌はウレアー」という酵素を出して自分の周りの胃酸を中和する特殊な能力を持っており、胃の中に住み着くことができます。
1983年にこの菌が発見されたことで、それまで体質やストレスが主な原因と考えられていた胃炎や胃潰瘍、そして胃がんの原因が明らかになりました。この功績により、発見者のウォーレン博士とマーシャル博士は2005年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

●ピロリ菌はどのように感染するのですか?

 ピロリ菌の感染経路はまだ完全には解明されていませんが、主に以下の経路で口から体内に入る(経口感染)と考えられています。
・井戸水などの飲み水
・食べ物
・口から口への感染(親から子への口移しなど)

なぜ幼少期に感染するのか

ピロリ菌は、免疫機能が十分に発達しておらず、胃酸の分泌も弱い5歳くらいまでの幼少期に感染しやすいことがわかっています。 免疫機能が確立している成人が、日常生活の中で新たにピロリ菌に感染することは極めてまれです。そのため、大人になってからのキスや食器の共有などでパートナーにうつしてしまう心配はほとんどありません。

●日本人のどれくらいの人が感染しているのですか?

 現在、日本には約3,500万人の感染者がいるといわれています。
・60代以上: 感染率が高く、60%以上の方が感染しているとされています。これは、上下水道などの衛生環境が十分に整っていなかった時代に幼少期を過ごしたためと考えられます。
・若い世代: 衛生環境が整った時代に生まれた10代〜30代では、感染率は大幅に低下しています。

しかし、若い世代でも親御さんがピロリ菌に感染していた場合、家庭内感染によってピロリ菌を持っている可能性があります。

●ピロリ菌はどのような病気を引き起こすのですか?

ピロリ菌感染による慢性的な炎症は、胃だけでなく全身の病気に関与することがあります。

1. 胃・十二指腸の病気

・ピロリ感染胃炎(慢性胃炎): 胃の粘膜が常に炎症を起こしている状態です。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍: 胃や十二指腸の粘膜が深く傷つき、痛みや出血を伴います。
・胃ポリープ(過形成性ポリープ): 炎症によってできるポリープです。
・胃MALTリンパ腫: 胃の粘膜にできる悪性リンパ腫(血液のがん)の一種です。

2. 胃がんとの密接な関係

 最も重要なのは、「胃がんの99%はピロリ菌感染がベースにある」といわれていることです。 ピロリ菌による炎症が長年続くと、胃の粘膜が薄くなる「萎縮性胃炎(いしゅくせいいえん)」が進行します。胃がんは、この萎縮した粘膜から発生しやすくなります。

3. 胃以外の病気

・特発性血小板減少性紫斑病(ITP): 血小板が減少し、出血しやすくなる病気です。ピロリ菌除菌により改善することがあります。

●ピロリ菌の検査はどのようにするのですか?

ピロリ菌の検査には、内視鏡(胃カメラ)を使う方法と、使わない方法があります。
※保険適用で検査・治療を行うためには、まず胃カメラをおこなう必要があります。

胃カメラを使用する検査

胃カメラの際に胃の粘膜組織を少し採取し、詳細に調べます。
・培養法: 採取した組織でピロリ菌を培養し、菌が増えるかを確認します。
・迅速ウレアーゼ法: ピロリ菌が持つ酵素の反応を利用して、その場で判定します。
・鏡検法: 採取した組織を染色し、顕微鏡で菌の有無を直接確認します。

胃カメラを使用しない検査

体への負担が少なく、検診や除菌後の判定によく用いられます。
・尿素呼気試験: 専用の検査薬を飲み、吐いた息(呼気)の成分を調べます。精度が高く、除菌判定によく使われます。
・抗体測定法: 血液や尿を採取し、ピロリ菌に対する抗体があるかを調べます。
・抗原測定法: 便を採取し、その中にピロリ菌の一部(抗原)が含まれているかを調べます。

●ピロリ菌の治療(除菌)はどのようにするのですか?

ピロリ菌の除菌治療は、飲み薬で行います。

1次除菌治療

以下の3種類の薬を、1日2回(朝・夕)、7日間続けて服用します。
・胃酸の分泌を抑える薬(1種類)
・抗生物質(2種類)

正しくお薬を飲みきることができれば、約80〜90%の方が1回目の治療で除菌に成功します。

2次除菌治療

もし1次除菌で失敗してしまった場合は、抗生物質の種類を1つ変えて、再度7日間の治療を行います(2次除菌)。これにより、ほとんどの方が除菌に成功します。
※判定検査について お薬を飲み終わっても、すぐに菌がいなくなるわけではありません。 正確な判定を行うため、治療終了から1ヶ月以上あけてから、除菌が成功したかどうかの検査(主に尿素呼気試験)を行います。

●除菌治療の副作用について

抗生物質を使用するため、副作用が出ることがあります。多くは一時的で軽度なものですが、知っておくことが大切です。
・下痢・軟便: 最も多い副作用です。腸内細菌のバランスが崩れるために起こります。
・味覚異常: 食べ物の味が苦く感じたり、おかしく感じることがあります。
肝機能障害・アレルギー反応(薬疹): まれですが、発疹やかゆみが出た場合は直ちに服用を中止し、医師へ連絡してください。

治療後の逆流性食道炎について

 除菌に成功した方の5~10%程度に、一時的に「逆流性食道炎(胸焼けや酸っぱいものが上がる感じ)」が起こることがあります。 これは、ピロリ菌によって抑えられていた胃酸の分泌機能が、除菌によって正常に戻り、元気になったことで起こります。多くの場合は軽症で自然に落ち着きますが、症状が辛い場合はお薬で調整可能です。

●除菌が成功したら、もう胃カメラは受けなくていい?

いいえ、除菌後も定期的な胃カメラ検査は絶対に必要です。

ピロリ菌がいなくなれば、胃の炎症は治まり、胃がんになるリスクは確実に低下します(30〜50%程度下がるといわれています)。 しかし、リスクが下がるだけで「ゼロ」になるわけではありません。

理由:胃には「ダメージ」が残っているから

長年のピロリ菌感染によって、胃の粘膜はすでに萎縮(老化現象のようなもの)を起こしています。一度萎縮してしまった粘膜は、除菌をしても完全に元通りにはならず、そのダメージが残った場所から胃がん(除菌後胃がん)が発生する可能性があります。

大切なのは「見逃さない」こと

「除菌したからもう安心」と思い込んで検査を受けなくなってしまうことが、一番危険です。 除菌後に発生する胃がんは発見しにくいこともありますが、定期的に胃カメラを受けていれば、万が一がんができても早期発見・早期治療が可能です。早期であれば、お腹を切らずに内視鏡だけで治療できる可能性が極めて高くなります。

あなたの胃の健康を守るために、除菌後も医師の指示に従い、1年に1回程度の定期的な胃カメラ検査を必ず受けましょう。