正式名称はヘリコバクター・ピロリと言います。1983年に発見され、発見者は2005年にノーベル賞を受賞しています。
ピロリ菌の感染経路は不明ですが、飲み水や食べ物を介して口から菌が入ってしまうことで感染するのではないかと考えられています。さらに、免疫機能が十分ではない幼児期に感染する可能性が高く、免疫機能が確立している成人が新たに感染する可能性は低いようです。
日本人の感染者は3500万人といわれています。また年齢が高い方ほどピロリ菌に感染している率が高く、60歳代以上の方の60%以上が感染しているとされます。
これは、水道水などのインフラがまだ整っていなかった時期に幼少期を過ごしたためではないかとされています。実際、衛生環境が整った頃に生まれた若い人たちの場合、感染率が低くなっています。
ピロリ菌は胃に生息します。感染するとまずピロリ感染胃炎を引き起こし、胃・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、機能性ディスペプシア、胃ポリープ、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)など様々な病気を引き起こすことがあります。また萎縮性胃炎となり、胃癌の原因となることが知られており、胃癌のほとんどはピロリ菌が原因といわれています。
(胃カメラ必要)
・培養法 :胃の組織を採取してピロリ菌を培養します。
・迅速ウレアーゼ法:胃の組織を採取してピロリ菌が持つ働きを利用して調べます。
・鏡検法 :胃の組織を顕微鏡で見てピロリ菌がいるか調べます。
(胃カメラ不要)
・尿素呼気試験 :ピロリ菌の働きを利用して呼気により調べます。
・抗体測定法 :血液や尿でピロリ菌に対する抗体を調べます。
・抗原測定法 :便の中のピロリ菌の抗原を調べます。
胃薬1種類、抗生剤2種類の合計3種類の薬剤を朝夕、1週間服用します。しっかり飲めば約80%で成功します。もし失敗した場合には薬を変更して2回目の治療を行います。治療が成功したかどうかは除菌治療終了後に1か月以上間隔をあけて検査をおこない判定します。当院では尿素呼気試験で判定をおこなっています。
・下痢
・味覚異常
・肝機能障害
・薬疹 など
副作用が出現した際には主治医に相談してください。
除菌が成功した患者さんの5-10%で逆流性食道炎が起こることが報告されています。除菌により低下していた胃酸分泌が正常に戻ることによるものと考えられていますが、軽度であることがほとんどで、治療が必要となることはまれです。
はい 。あります。
ピロリ菌がいる胃は、粘膜が萎縮する萎縮性胃炎という状態となります。胃がんはこの萎縮性胃炎の粘膜から発生することがほとんどであり、萎縮性胃炎が進行すると胃がん発生の危険性がより高まります。
ピロリ菌を除菌することで、胃の炎症が徐々に軽快し、萎縮性胃炎も改善する傾向があり、胃がんの発症が抑制できることが明らかにされています。しかし、除菌で胃がん発生の危険性が下がることは確かですが、ゼロにはなりません。さらに、ピロリ菌除菌前の胃炎の状態が進んでいるほど除菌後も胃がんのリスクはより高く残ります。除菌が成功して安心し、胃がん検診を受けなくなるケースがあり問題となっています。除菌が成功しても定期的な胃カメラが必要で、特に萎縮性胃炎がある場合はより注意が必要です。早期に胃がんがみつかれば胃がんで死亡する危険性は極めて低いことからも、ピロリ菌除菌後にも定期的に内視鏡をうけることが重要です。