肝炎とは、ウイルスやアルコール、薬物、自己免疫などの様々な原因によって肝臓の細胞が破壊され、炎症が起きている状態を指します。肝臓は、私たちが食べたものを栄養として使える形に変える(代謝)、アルコールや老廃物を無害化する(解毒)、脂肪の消化を助ける消化液を作る(胆汁の生成)など、生命維持に欠かせない500種類以上もの働きを担っています。
しかし、肝炎によって細胞の破壊が続くと、これらの機能は徐々に低下していきます。炎症が長期間続くと、肝臓は硬くなり(線維化)、やがて肝硬変や肝がんへと進行するリスクが高まります。
肝臓は予備能力が非常に高く、多少の障害があっても働き続けることができます。そのため、肝炎になっても初期段階では自覚症状がほとんど現れません。 「なんとなく体がだるい」「食欲がない」といった不調を感じた時には、すでに病気が進行しているケースも少なくありません。これが、肝炎が沈黙の臓器の病気と言われる理由であり、定期的な検査が重要とされる最大の理由です。
肝炎の原因は多岐にわたり、それぞれ治療法や経過が異なります。適切な治療を受けるためには、まず原因を特定することが第一歩です。
日本における肝炎の原因で最も多いのがウイルスによるものです。原因となるウイルスによって、主に以下の種類に分類されます。
主に血液や体液を介して感染します。この2つは慢性化しやすい(長期間ウイルスが体にとどまる)のが最大の特徴です。 自覚症状がないまま10年、20年という長い年月をかけて肝細胞の破壊と再生が繰り返され、肝硬変や肝がんへ進行する主要な原因となります。
・治療の進歩: 現在は医療の進歩により、ウイルスを排除したり増殖を抑えたりする飲み薬などの有効な治療法が確立されています。早期に治療を開始すれば、重症化を防ぐことが十分可能です。
主にウイルスに汚染された水や食べ物(加熱不十分な魚介類や獣肉など)を摂取することで感染します。
・一過性の急性肝炎として発症し、発熱や強いだるさ、黄疸(皮膚や目が黄色くなる)などの症状が現れます。
・多くは安静にすることで自然に治癒しますが、稀に劇症化して命に関わることがあるため、油断は禁物です。

長期間にわたり多量の飲酒を続けることで発症します。 アルコールの分解過程で生じる毒性物質などが肝臓の細胞を傷つけます。初期段階では脂肪肝(肝臓に中性脂肪がたまった状態)が見られますが、飲酒を続けると肝炎、そして肝線維症、肝硬変へと進行します。
・リスク: 常習的に飲酒をしている方は、痛みなどの症状がなくても肝臓が悲鳴を上げている可能性があります。
・治療: 最も重要な治療は禁酒です。アルコール依存症の疑いがある場合は、専門機関と連携して断酒に取り組む必要があります。

「お酒をあまり飲まない」あるいは「全く飲まない」にもかかわらず、アルコール性肝炎と同じように肝臓に脂肪がたまり、炎症や線維化を起こす病気です。 近年、メタボリックシンドローム(肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧)の増加に伴い、患者数が急増しています。
・単なる脂肪肝と軽く考えられがちですが、放置すると肝硬変や肝がんへ進行することがあります。
・治療は、食事療法(カロリー制限やバランスの改善)と運動療法による体重コントロールが基本となります。

病気の治療のために服用した薬や、サプリメント、健康食品などが原因で起こる肝炎です。 医師から処方された薬だけでなく、ドラッグストアで購入できる市販薬や漢方薬でも起こる可能性があります。
・薬の毒性によるものと、体質によるアレルギー反応によるものがあります。
・予測が難しく、服用開始から数週間~数ヶ月後に血液検査で初めて異常が見つかることもあります。
・原則として、原因となっている薬剤の使用を中止することで改善を目指します。

本来、細菌やウイルスから体を守るはずの免疫システムに異常が起き、誤って自分の肝臓の細胞を攻撃してしまう病気です。
・中年以降の女性に多く見られる傾向があります。
・原因は完全には解明されていませんが、遺伝的な要因や環境要因が関与していると考えられています。
・治療には、免疫の働きを抑えるステロイド剤や免疫抑制剤などが用いられます。長期的な管理が必要になることが多い病気です。

肝臓は症状が出にくい臓器ですが、病気が進行すると以下のようなサインが現れることがあります。
・全身の倦怠感(だるさ)、疲れが取れない
・食欲不振、吐き気
・皮膚のかゆみ
・尿の色が濃くなる(ウーロン茶色)
・白目や皮膚が黄色くなる(黄疸)
・お腹が張る、足がむくむ
これらは、肝機能がかなり低下してから現れる症状です。症状がないから大丈夫と自己判断せず、客観的な数値で判断することが大切です。
肝臓の状態を正確に把握するためには、数値だけでなく、肝臓の形や硬さなどを総合的に診ることが大切です。当院では、患者さんの負担をできるだけ抑えつつ、精度の高い診断を行っています。
まずは、いつ頃から数値の異常を指摘されたか、自覚症状の有無、普段のライフスタイル(飲酒量、服薬状況、食事内容など)について詳しくお話を伺います。 また、手のひらの赤みや腹部の張りなど、肝臓病特有のサインが体に現れていないかを医師が診察します。
肝臓の炎症の程度や機能の低下具合を数値で確認します。 一般的な健康診断の項目(AST、ALT、γ-GTPなど)に加え、必要に応じて肝炎ウイルスの有無や、肝臓の線維化(硬さ)を推測するための特殊な項目、腫瘍マーカーなどを調べ、原因を絞り込んでいきます。
お腹にゼリーを塗り、超音波を当てて肝臓の状態を映像として観察します。 痛みや被ばくの心配がなく、その場ですぐに検査ができる非常に有用な検査です。 脂肪肝の程度、肝臓の表面が凸凹していないか(肝硬変の兆候)、腫瘍がないかなどを詳しくチェックします。
検査結果に基づき、現在の肝臓の状態(ステージ)と原因を診断します。 ウイルス性であれば抗ウイルス薬、生活習慣が原因であれば生活指導など、患者さん一人ひとりの病態と生活環境に合わせた最適な治療計画を提案します。
肝炎は、かつては治りにくい病気と言われることもありましたが、現在は検査技術や治療薬の進歩により、早期に発見して適切に対処すれば、進行を食い止め、健康な人と変わらない生活を送ることが可能な病気になっています。
・健康診断でAST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの数値が高いと指摘された
・家族に肝臓病の人がいる
・輸血や大きな手術を受けた経験がある
・お酒をよく飲む、または最近体重が増えてきた
・最近、疲れやすく体調がすぐれない
肝臓の数値異常を指摘された場合、一時的なものか、治療が必要なものかを判断するには、腹部エコー検査や詳しい血液検査などによる専門的な診断が必要です。 将来の健康を守るためにも、気になることがあれば放置せず、お早めにご相談ください。