はら内科医院 内科・内視鏡内科・消化器内科・肝臓内科

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便秘

便秘は立派な「病気」です

「毎日出ていないから便秘」「お腹が張って苦しいけれど、薬を飲むのは怖い」 そのようにお悩みではありませんか? 実は、日本人の約10人に1人が悩んでいるといわれるほど、便秘は身近な病気です。しかし、市販薬で誤魔化したり、「体質だから」と諦めている方が非常に多いのが現状です。 便秘を放置すると、お腹の不快感だけでなく、食欲低下、肌荒れ、さらには生活習慣病のリスクにもつながることがわかってきました。 正しい知識と適切な対処法を知り、すっきりとした毎日を取り戻しましょう。

1. 便秘とは?(定義と症状)

 便秘とは、本来体外に出すべき便が腸の中に溜まり続けている状態、または便を快適に出せない状態のことを指します。 医学的には「本来排泄すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。

「毎日出ない=便秘」とは限りません

「1日1回必ず出ないと便秘」と思われがちですが、排便のペースには個人差があります。 2〜3日に1回の排便であっても、スムーズに出て残便感(出し切れていない感じ)がなく、お腹の張りなどの不快感がなければ、治療の必要がない場合もあります。 逆に、毎日出ていても、以下の症状があれば「便秘」の可能性があります。

こんな症状は便秘のサインです

ご自身に当てはまるものはありませんか?
・排便回数の減少:週に3回未満しか出ない。
・便の硬さ:ウサギのフンのようにコロコロしている、硬くて出すのが痛い。
・排便困難:強くいきまないと出ない、排便に時間がかかる。
・残便感:出した後も、まだお腹に残っている感じがしてすっきりしない。
・閉塞感:出口(肛門)で便が詰まっている感じがする。
・腹部症状:お腹が張る、お腹が痛い、ガス(おなら)が溜まる。

2. 便秘の人はどれくらいいるの?(疫学)

便秘は国民病とも言えるほど一般的な症状です。 厚生労働省の調査などによると、日本人の約10〜15%(およそ10人に1人以上)が便秘に悩んでいるとされています。

・若い世代:ホルモンバランスやダイエットの影響もあり、女性に多く見られます。
・高齢者:70歳を超えると男女差がほとんどなくなります。加齢による筋力低下などが原因で、男性の患者さんも急増します。
・子供:最近では小学生の約2割が便秘傾向にあるという報告もあり、年齢を問わず誰にでも起こりうる問題です。

3. なぜ便秘になるの?(原因)

便秘の原因はひとつではなく、生活習慣、腸の機能、隠れた病気など、いくつかが複雑に重なっていることがほとんどです。

① 生活習慣や環境によるもの

・食事量・食物繊維の不足:ダイエットなどで食事量が減ると、便の材料が不足します。
・水分不足:便が硬くなり、腸内を移動しにくくなります。
・運動不足:腸を動かす刺激が弱くなります。
・便意の我慢:学校や職場、外出先でトイレを我慢することを繰り返すと、直腸のセンサーが鈍くなり、便意を感じにくくなります(直腸性便秘)。
・ストレス・生活リズムの乱れ:腸の動きは自律神経によってコントロールされています。ストレスは腸の動きを停滞させる大きな原因です。

② 身体機能の低下によるもの

・腸の動き(蠕動運動)の低下:腸が便を押し出す力が弱まっている状態です(弛緩性便秘)。
・筋力の低下:加齢などにより、いきむための腹筋や骨盤底筋の力が弱くなります。

③ 病気や薬の影響(二次性便秘)

「ただの便秘」と思っていても、実は背景に病気が隠れていることがあります。

・大腸の病気:大腸がん、腸閉塞(イレウス)、炎症性腸疾患(Crohn病潰瘍性大腸炎)などによる腸の狭窄。
・全身の病気:甲状腺機能低下症糖尿病、パーキンソン病など。
・薬剤の副作用:痛み止め(オピオイド系)、抗うつ薬、咳止め、血圧の薬、鉄剤など、一部の薬が便秘を引き起こすことがあります。

【注意】危険な便秘のサイン(アラームサイン)
以下の症状を伴う場合は、大きな病気が隠れている可能性があります。自己判断せず、すぐに受診してください。
・急に便秘が悪化した
・便に血が混じっている(血便)、便が黒い
・便が細くなった
・理由のない体重減少がある
・激しい腹痛や嘔吐がある
・50歳以上で、これまで大腸がん検診を受けたことがない

4. 自分できる便秘対策(生活習慣の見直し)

薬を飲む前に、まずは腸が働きやすい環境を整えることが治療の第一歩です。できることから始めてみましょう。

【食事】「育てる」と「出す」を意識する

・食物繊維を摂る:
◦水溶性食物繊維(海藻、果物、大麦、ネバネバ食品など):便を柔らかくし、ツルッと出しやすくします。便が硬い人におすすめです。
◦不溶性食物繊維(豆類、根菜、きのこなど):便のカサを増やし、腸を刺激します。
※すでに便が詰まっている人が摂りすぎると、逆にお腹が張ることがあるためバランスが大切です。
・朝食を抜かない:空っぽの胃に食べ物が入ることで、腸が大きく動く「胃・結腸反射」が起こります。朝は排便のゴールデンタイムです。
・適度な油分:オリーブオイルなどを適量摂ると、潤滑油の働きをしてくれます。

【水分】こまめなチャージ

・起床時のコップ1杯の水:朝起きてすぐに水を飲むことで、腸を目覚めさせます。
・1日1.5〜2リットルを目安に:水分が不足すると、腸は便から水分を吸収してしまうため、便がカチカチになってしまいます。

【運動・マッサージ】腸に刺激を与える

・ウォーキング:全身運動は腸の働きを活発にします。
・「の」の字マッサージ:おへそを中心に、時計回りにゆっくりお腹をマッサージすることで、腸の動きをサポートします。

【トイレ習慣】姿勢を変えてみる

・我慢しない:「行きたい」と思ったその瞬間が、一番出しやすいタイミングです。
・ロダンの「考える人」のポーズ:洋式トイレでは、少し前かがみ(前傾姿勢)になるか、足元に台を置いて膝の位置を股関節より高くすると、直腸と肛門の角度がまっすぐになり、便が出やすくなります。

5. 医療機関での治療(薬物療法)

生活習慣を見直しても改善しない場合や、苦痛が強い場合は、お薬による治療を行います。 「便秘薬=お腹が痛くなる・クセになる」というイメージをお持ちの方も多いですが、近年、お腹が痛くなりにくく、クセになりにくい新しいお薬が次々と登場しており、治療の選択肢は広がっています。

当院では、患者さんの便のタイプや原因に合わせて、最適なお薬を処方します。

① 便を柔らかくする薬(ベースとなる治療)

便の水分量を増やし、自然に近い排便を促します。習慣性が少なく、長期間でも比較的安心して使用できます。

・浸透圧性下剤(酸化マグネシウム、PEG製剤など): 腸内に水分を引き寄せ、硬い便を柔らかくします。最も基本となるお薬です。
・上皮機能変容薬: 腸管内への水分分泌を促進し、便を柔らかくして移動しやすくする新しいタイプのお薬です。
・膨張性下剤: 食物繊維のように便のカサを増やし、腸を刺激して排便を促します。

② 腸を動かす薬(刺激性下剤)

・大腸刺激性下剤(センノシド、ピコスルファートなど): 腸を直接刺激して無理やり動かすお薬です。即効性はありますが、使いすぎには注意が必要です。基本的には、上記のお薬を使っても出ない時の「頓服(レスキュー)」として使用します。

③ 漢方薬

・体質や症状(お腹の張り、冷え、ストレスなど)に合わせて処方します。

⚠️ 重要:市販の便秘薬・健康食品の注意点

〜「大腸メラノーシス」と「下剤依存」について〜

市販の便秘薬や、「お通じが良くなる」と謳う健康食品・お茶には、「センナ」「アロエ」「大黄(ダイオウ)」「カスカラ」「キャンドルブッシュ」といった成分が含まれていることが多くあります。これらはすべて「刺激性下剤」に分類される成分です。 これらを漫然と長期間使用し続けると、以下の問題が起こることがあります。

1.耐性(効かなくなる):体が薬の刺激に慣れてしまい、量が増えていってしまう。
2.依存(やめられない):薬がないと自分で排便できなくなる。
3.大腸メラノーシス(大腸黒皮症):大腸の粘膜が黒く色素沈着を起こし、腸の神経がダメージを受けて、腸の動きがさらに悪くなってしまう(弛緩性便秘の悪化)。

「自然由来だから安心」とは限りません。 もし、市販薬の量が増えてきている方や、毎日飲まないと不安な方は、腸が悲鳴を上げているかもしれません。一度成分表示を確認し、早めにご相談ください。 医師の管理のもと、「クセになりにくい薬」への置き換えを行い、自然な排便を取り戻すサポートをいたします。

最後に:便秘は我慢せず、相談してください

便秘は、QOL(生活の質)を大きく下げるだけでなく、心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患のリスクとも関連があることが近年の研究で指摘されています。 「たかが便秘」と軽く考えず、つらい症状はお気軽にご相談ください。 お一人おひとりのライフスタイルに合わせ、無理なく続けられる治療法を一緒に見つけていきましょう。